雪が見たい
水中原動機

冬は人が死ぬ季節だと思っていた
小学校4年生の1月におじいちゃんが死んだ
その年
田舎では何十年に一度かの大雪が降った

毎週法事があって
行くたびに大雪で
父親たちは屋根の雪おろしをした
その雪ですべり台を作ってくれた

法事が始まるまでの2時間くらいと
終わってから日が暮れるまで
小さかった私たちは
雪でたくさん遊んだ

すべり台はもちろん
かまくらも作ったし
つららを食べたり
雪合戦をしたり

四十九日の法事が終わるころ
私よりもっと小さかった弟が盲腸になって
それから先のことはあんまり覚えてない
いつの間にか雪が消え桜が咲いていた

おばあちゃんも冬に死んだ
家に帰ってきたおばあちゃんの身体に触れると
氷のように冷たくて
とっくに大人になってたのに声をあげて泣いた

大雪は降らなかったけれど
彼方に見える山がすこんと抜けて
白くてキレイだった
チラチラ雪が舞っていた

冬になると雪が見たくなる
おじいちゃんのことおばあちゃんのこと
楽しかった雪遊び
かなしみはどこかにしまってる


自由詩 雪が見たい Copyright 水中原動機 2010-01-21 23:46:35
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