雪ぐに
因子
私は東京の人になった
東京の人は傘をさす
おちてくるものから身をかくし
熱の拡散を厭うている
私は東京の人になった
どこへ行ってもだいたい
東京の人だと思っていたが
ここへ来てようやく
東京の人になった
わたしがどこでどのように生きて
どんなふうに息をしていたのか知らない
それでもおりてくるものたちを
ひとの声をうばうものを
やまをつつむものを
母がぼたんゆきと呼んだぼたんゆきを
己のやわいてのひらを
おぼえている
自由詩
雪ぐに
Copyright
因子
2010-01-21 16:53:46