「残花」
月乃助
レッドウッドの梢のさき
木漏れ日は森閑のゆらめき
私のなかで…落ちていきました
小さな音がかえってきては、
だからか、そこに声を聞いた気がしたのです
のどの奥でわずかな声を押し殺すような
どこか 虫の音にさえもにている
常緑の葉を白く染める陽になって
やってくることもあるのかと ほんの少し
踵を上げ 首をのばしてみる
目を凝らしてみれば 妹の姿がそこにあらわれるのかもしれない
そんな想いにでも、ただ、風が
冬の声になって0℃のあざけりの笑いをあげていた
枝の影に隠れているなら、
口元のゆるんだ笑顔も、忘れそうなのだから
青白く冷たくなった顔ばかりを見せ付けられていたから
それが、ずっともう薄らいでいたのに
餌を求める鳥達の鳴き声さえも シンとして
羽音さえも聞こえてくるのですね
鳥の姿になって、綿毛のような胸をふくらまし
私に会いにきたのですか
寒さに休み休み枝の間に白くなり
悲しく笑ったりするから
風が心の中までもふいてくるようです
咲き枯れたバラの花が一りん、木の下に
死んだように静まった顔をしているのは、
やはりおまえの顔だったのかもしれません
こんな話をすれば、怒ったように眉をよせる
妹のことを今日は、どうしてか
思い出したりしていました