海草の想い
朧月
私はある日 海草でした
十本の指は ゆらゆらと動き
それぞれに意志をもちながらうごめいている
波を受けながらカラダはおして ひいて
足はだらしなくとられ ぐねぐねと わなわなとふるえる
培ってきたといわれる歴史と
あるといわれている未来と
せかされている今に あえぎながら
おぼれることもない海草です
なにから なんのために生まれ 生きるのか
いかされているのかを太陽に尋ね
風に学び 海に委ね 偶然を待ちわびる
岸になにかがあるような気がして
水面からでることを希望とし
安らぎは海にしかなく
いつか生まれ
いつかゆき
その後は どうなっているのか知らぬまま
ただよっている海草なのです
ある日きた荒波は
私をひきちぎるのでしょう
いく千もに 引き裂かれた私の
ひとつひとつの細胞は
細かな粒子になって
地球に撒かれる 吸収される 排出される
永遠 を ことわりもなく哀願する私のからだを
ゆらゆらとその表面を /海草の
荒々しくともよい
砕いて
海にかえせよ
その曲線が 波にとけきるとき
私は 泡になれる 永遠になれる
うまれたこと ゆくこと いたこと
全ての旅は
願う姿になることで 終わりを告げる