地層
あ。
きみのひらがなにぼくの声を重ねて
地層みたいなしま模様になって
それはありふれたメロディーで
すき間にもぐりこむ小さな虫ですら
小気味良いアクセントにしかならなくて
さっき港を出発した観光船が
ぼおっと抜けるような音を大気に溶かす
太い振動がしんなりと埋め込まれてゆき
不規則な波形を描きながら通り過ぎる
もしも海賊なんかが現れたりしたら
ざわついた色味が加えられるのかもしれない
そんなことはそうそうないので
今日も穏やかで美しい層がひとつ出来る
ぼくの世界はとてもちっぽけで
神様の爪先にだって届きやしない
ちっぽけな世界にちっぽけな地層があって
ぼくの足の下にも
ぼくの頭の上にも
ぼくの胸の中にも
幾重にも幾重にも折り重なって
見えないそれはきっと例えようもないほど美しく
ちっぽけな世界にメロディーを
永遠に続く穏やかな波形を
語り継がれてきた歴史に敬礼を
きみに誓った愛を
ぼくに誓った愛を
どこまでも終わらない愛を
積み重ねてゆく未来を