かいぶつ
九重ゆすら

森はやがて夜に飲み込まれた
それをこの眼ではっきりとみた
獣は闇の底で息を殺していたし
眼底にはまだ何も無かった

かいぶつ,

重い曇天の空に,風がびゅうびゅうと吹いて
「とても濁った窓の向こうを 見てはいけないよ」
散在する炎が すごく赤い
風が引っ掻き,散らして もっと赤い
渦巻く、それは巨大だ
きっと手首まで骨になってしまうね

窓硝子の震える音 幼い呼び声がする
そっと目を向ける あれ、は

眩い,光,その鉾先を,知ってしまう

両眼が捉える 赤ではなかった(もっと別の)
風が巻き起こる 手をのばした
脚をとられる、弾ける、潰れる、砕ける
あとは、真っ暗でした

かいぶつ.


自由詩 かいぶつ Copyright 九重ゆすら 2010-01-17 20:26:33
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