かいぶつ
九重ゆすら
森はやがて夜に飲み込まれた
それをこの眼ではっきりとみた
獣は闇の底で息を殺していたし
眼底にはまだ何も無かった
かいぶつ,
重い曇天の空に,風がびゅうびゅうと吹いて
「とても濁った窓の向こうを 見てはいけないよ」
散在する炎が すごく赤い
風が引っ掻き,散らして もっと赤い
渦巻く、それは巨大だ
きっと手首まで骨になってしまうね
窓硝子の震える音 幼い呼び声がする
そっと目を向ける あれ、は
眩い,光,その鉾先を,知ってしまう
両眼が捉える 赤ではなかった(もっと別の)
風が巻き起こる 手をのばした
脚をとられる、弾ける、潰れる、砕ける
あとは、真っ暗でした
かいぶつ.