思い川
都志雄

小さな毛糸の手袋が片一方、
橋の袂に落ちていた

どんな子が落としていったのか

いやそれとも

こんなに小さな手を守ろうと
優しさが形を成して包み込んだのは

私の手ではなかったか


北風の運んできた透明な夕暮れ時
ふと拾い上げた手袋を持て余し、

立てば夕空、座れば川面

思いは川に降り立って
思い流れる、思い川
思い募って川となり

私もこの川下れたら


きっとそこには待っている

こんなに小さな手をしてた
あの日の私、待っている

軒先の明かりの下で
いつまでも


立てば夕空 座れば川面
思い流れる、思い川

小さな思い どんぶらこ
流れ流れて いきまする




自由詩 思い川 Copyright 都志雄 2010-01-17 18:38:01
notebook Home 戻る  過去 未来