君に会わせたい奴がいる
鵜飼千代子

             君に会わせたい奴がいる

             泣いていたんだ
             ぼろぼろ泣いていたんだ
             涙がぽろりとこぼれたわけ
             じゃない
             その時、空は青かったなんて
             知らない
             震災の瓦礫の下から
             掘り出してあげた木箱の中の
             ひな人形を抱いて
             あの女性はぼろぼろ
             泣いていたんだ

             君に会わせたい奴がいる

             ここはだね
             もうちょっと折り込んでみたら
                俺はそれでは感動しない
             だからね
             ほら ここはこんな風に
                俺を選んだのはあんたらだろ
             題材はいいんだよ
             もう少しわかりやすく
                じゃあお前がやれ

             君に会わせたい奴がいる

             ふやけたおぼっちゃま中年の
             苦労話はもう いいよ
       
             君に会わせたい奴がいる
             
             25にもなって
             青年意見発表会の代表?
             まだやってるの? 
             わたしは笑った
 
             言うことを聞かせたいなら
             新卒くんを使えばいい
             嘘八百大会だということは
             わかっている
             多く嘘をついた奴の
             勝ちだから
             部長の俺を選んだんだ
             好きに書かせろ

             面白い奴だねえ、きみは 
             
             君に会わせたい奴がいる

             一番は命
             次は 金目のもの
             合間を縫うように
             思い出の品 なんだ

             君に会わせたい奴がいる 
  
             君には会わせたい奴がいる

             君
             君
             君
             君
             君だから


             君に会わせたい 奴がいる




             YIB01036 1998.07.04. Tamami moegi.
             初出 FPOEM


自由詩 君に会わせたい奴がいる Copyright 鵜飼千代子 2010-01-17 08:46:24
notebook Home 戻る