進路希望調査
エルメス

志望校の欄には、必ず書くこと、という注意書きがあった。
どうやら、未定、というモラトリアムの代名詞は此処では通用しないらしい。

まぁ、そりゃあ、進学校だもんな。大学に行くための高校だもんな。志望校くらいは書かせるよな。

しかし、困った。今の時点で知っている大学なんてタカが知れている。
そんな状態で志望校を書いていいのか。でも、書かないといけないんだから、適当に書くか。



下の欄は、文理選択とそれぞれの科目選択をする欄だった。
特に迷いもせず理系を選択。特に理由もない。ただ、社会が嫌いだ、というだけ。

そんな理由で決めていいのか、と問われれば、否。
他に何か適当な理由があるか、と問われても、否。

性格が優柔不断な僕は、適性だってどっちつかずだ。
業者の診断テストを受けてみたら、僕の位置はグラフ上の原点に限りなく近かった。



提出は既にした。下手をすれば、人生を左右するかもしれない書類だったが。
そんな深刻な気持ちで考えたところで、答えが出るような問題でもない。


さて、何になろうか。どの大学へ行こうか。何を学ぼうか。何が好きなんだろうか。僕は。
東大にでも行ってみれば、明るい未来が待っているのだろうか。
物理でも学んでみれば、この世の全てが解ってしまうのだろうか。

根源的な問いには答えが出せない。自分の芯に近ければ近いほど、また答えも出しづらい。

僕は一体何がしたいのだろう。何を目指すべきなんだろう。
どんな仕事をしていれば、充実感を得られるのだろう。
僕の関心をひきたてるものは、いったい何だろうか。


おかしいな。進学校というのは、こういうことは何も教えてくれない。




さて、何になろうか。


散文(批評随筆小説等) 進路希望調査 Copyright エルメス 2010-01-16 21:14:55
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