夕餉
鵜飼千代子
燈の灯る
夕餉の時は
ひとりが良い
幾つもの
当たり前を
ひとつひとつ
辿る時間が
贅沢なのだ
団欒を
知っているから
とても
近しいものだから
ひとりの夕餉の贅沢を
山盛り
こころを澄ませて
いるのだろう
明日への風を身に矯めて
大きく舵を切る
夕餉という言葉とは
少し不似合いな
ピッツァ カプリチョーザを
頬張りながら
ちょっと
ツナが多めかな
と
タバスコを
マラカスのように振って
振り掛けて
自分の速さの
夕餉の時を
楽しんでいる
暖炉の薪は
今日も威勢良く
燃え上がる
明日を啓示する
自然の占い種だ
2003.01.07
初出 海嶺12号
うろこアンソロジー 2003年版 所収
2003.07.19
ちいさな朗読会にて朗読
(レンタルスペース渋谷サンクス)
日本詩人クラブ 2003年11月例会
「会員による自作詩朗読と小スピーチ」にて朗読