こどくのあし
白砂ユキ

しずかにやんだ川を
木につるしてから出かける
まだわからずに
陶器の横顔
すれちがう人を
飲み干した
だけの流れ
持てやしないまま
垂れおちるときの膨らみ
あらわれた褐色に
もう私が寝返りをうつ
、の中につづまる蜂は
みしりと音を立てて


ここ、
ここで竦む風船のなか
模様を吹きながら
洗われた欄干
跳び落ちらない
住基のすみに
あなたが点を
うがち、
克ち、
もとを辿る
つぶれた無線機
ふり返るままの柔らばかりが
かたい
のかな
面白いことだけが
おちてくる
バウンディング


つれていかない
さしだされない
歯のつぶは灼熱、
巻いて、つがいの拍も閑古
しずかな光沢を
耄碌を翡翠にかえてから
まつわりつく枝
瓶にすべり落として
おごそくも睫毛が
障るように
舌の乾きは粗目
わたしの犬を引き連れ
襞に指をさしこむあなたと
走り方の唱えたさを手折って
あなたとのもない
わたしでさえもない
死罪


ひまわりが積雪する
くぼんだ骨々のあいだを
葉脈のような足取りで
抜けていく
真昼はまだ
手の甲が冷たい
わたしは折られた首で
弓を落とす彼女
甘たるい頸と
縁取りを運ぶ口のしたの明かりはない
あなたが掛けた弧だけを
やさしくつぶすような
しろく頬摺りしている像が
、である
、でした


電車をのりかえる
余れだす時刻の
わたしでなくなった石像と
ふくれた眉が
押し破りだす身体を
豪語に鈍くしずんで
さっき分かたれたの、と
あなたが転がした
道路の淡いなつめと雲
良好です
朧にした乗の列も
手を凝固する手をすれて
沙上した名前の、
真昼のようなにぶみと
あかるい色
名前を編んだからいてくれて
ここを歩くのにね
目のなかの百合が
止められるほど
くずれ落ちて
紫色の鮮やかなあなたと
ひとりきりに
反復した口づけが
足の中から這いずり出ていく


自由詩 こどくのあし Copyright 白砂ユキ 2010-01-16 13:53:59
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