開けゴマ
鵜飼千代子

             肩のふれあう距離で
             並んで歩いてゆこう 
             
             「いっしょに写真は、 
             撮らない。
              歌は、唄わない。」      
              
             くすっ
             
             「ギターは弾かない」
            
             合言葉は 開けゴマ
             
             始発のベルが 鳴る
                 あなたがいなくなる
             電車のドアが閉まる
                 缶コーヒーが冷たい
             
             ちいさく 手を振って
             心が伝わらないように
             ちいさく
             
             滑り出す電車が引き伸ばす 
             ここからずっと
             あなたの住む街まで
             長く遠く 
             想いを 繋げてゆく
             
             都心に向かう
             あなたのリズムを背中に聞いて
             昇り始めた朝日に向かい
             アクセルを踏み込む
             
             ねえ、 
             朝焼けが綺麗だよ

             ハンドルの上に両腕を束ねて
             頭を埋めて
             息を詰めて
             絶対 泣いたりなんかしない
             
             きっとまた
             きっとまた
             会えるから
             
             必ずきっと
             会えるから
             
             
             合言葉は!
             
             
             
       YIB01036 1998.10.01 Tamami Moegi.
       初出 FPOEM


自由詩 開けゴマ Copyright 鵜飼千代子 2010-01-15 18:28:24
notebook Home 戻る