塩小路
ことこ

*化石

ならない電話をのみこんで
渦まくコードの
耳から漏れる
おとのかたまりを見つめてた。


*氷菓

たて波の断面のように
歯こぼれしていた、
底冷えのあさ
薄切りのきゅうりを
しおもみする
あなたの手なれたてつきは
迷いひとつなく

(ちそうをてさぐる
(はりめぐらされた地下鉄
(ぼうぜんとしながら、とおりすぎてゆく
(息つぎの しろい
(雑踏

おどろくほどかるい
すかすかの骨を並べて
路線図を模すと
せいぜんとした、標本のように
収められてゆきます


*流木

しもやけが
路肩のあたり
いちめんを覆う
わきたつ感触

まざまざとあらわれる
干渉縞の
波うち際で
(かつて根があり、気孔があった)
幹は
流線をとどめたまま

交錯する袋小路で
削ぎ、おとされた
受話器を置く


自由詩 塩小路 Copyright ことこ 2010-01-15 14:11:13
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