冬と門
木立 悟
鏡の音を書きとめて
一晩がすぎ 二晩がすぎる
夜の鳥の声 水をわたり
水に映る
曇の時計
貝の内の午後
誰も見ない青
棘と牙の青
二つ三つ不確かな
一筆書きの街と街
四季に途切れ 燃えながら
迷路の上に浮きながら
灰昇る白
昇ることなく 昇る白
柱
声の柱
持ち上がり
割れる水
元に戻り
前よりもふくらみ
灼けつづける花
あらゆるものに
灼けつづける花
誰もその場から動けずに
ただ灼けてゆくのを見つめている
端を折った
また 端を折った
刺された月
午後 夜 午後の
川を流れる
道より高い川が鳴り
午後の空に紋を作り
雨と約束をとりかわす
二度と刃には戻らないと
羽に応え
無羽に応え
片羽に応え
空をついばみ
閉じ 見つめ
閉じ 見つめる
目に生えた牙の隙間から
降りつづく雪を見つめている
何もかも尽きるところに門があり
その先の無いまま門でありつづく
水は進み 水は消える
門のむこうに 水は消える
静かな波が
静かな雪を見つめている
小さな指の冠が
小さな冬を持ち去ってゆく