冬と門
木立 悟







鏡の音を書きとめて
一晩がすぎ 二晩がすぎる
夜の鳥の声 水をわたり
水に映る


曇の時計
貝の内の午後
誰も見ない青
棘と牙の青


二つ三つ不確かな
一筆書きの街と街
四季に途切れ 燃えながら
迷路の上に浮きながら


灰昇る白
昇ることなく 昇る白

声の柱


持ち上がり
割れる水
元に戻り
前よりもふくらみ


灼けつづける花
あらゆるものに
灼けつづける花
誰もその場から動けずに
ただ灼けてゆくのを見つめている


端を折った
また 端を折った
刺された月
午後 夜 午後の
川を流れる


道より高い川が鳴り
午後の空に紋を作り
雨と約束をとりかわす
二度と刃には戻らないと


羽に応え
無羽に応え
片羽に応え
空をついばみ


閉じ 見つめ
閉じ 見つめる
目に生えた牙の隙間から
降りつづく雪を見つめている


何もかも尽きるところに門があり
その先の無いまま門でありつづく
水は進み 水は消える
門のむこうに 水は消える


静かな波が
静かな雪を見つめている
小さな指の冠が
小さな冬を持ち去ってゆく





















自由詩 冬と門 Copyright 木立 悟 2010-01-14 23:58:34
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