感覚
夏嶋 真子





浴槽に額を沈める。




水深650mmで
月へと遡上する魚の群れは
尾びれに三日月を宿して
銀の腹は空っぽのまま

ドライアイの魚達が
すっかり通り過ぎたあとには
ひりひりと乾いた水が残されて

てのひらに掬うと
びりびりと
夜の破れる音がする

乾ききったくちびるで
その音をまねるとき
唇は裂けて
ぴりぴりとにじむ

したの上で
ひりひりと
びりびりと
ぴりぴりと




浴槽から額を取り出す。





携帯写真+詩 感覚 Copyright 夏嶋 真子 2010-01-14 13:17:01
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