浴槽に額を沈める。 水深650mmで 月へと遡上する魚の群れは 尾びれに三日月を宿して 銀の腹は空っぽのまま ドライアイの魚達が すっかり通り過ぎたあとには ひりひりと乾いた水が残されて てのひらに掬うと びりびりと 夜の破れる音がする 乾ききったくちびるで その音をまねるとき 唇は裂けて ぴりぴりとにじむ したの上で ひりひりと びりびりと ぴりぴりと 浴槽から額を取り出す。