飾る花瓶がなかったから
オンガシ
最終電車の最終駅
薔薇の花束を抱えた君
憂いた瞳に何思う
前に座っていた男
広げた新聞取っぱらい
切り立つ魔羅を見せつけた
意気揚々とたちあがり
片足ピンヒール脱いだ君
ドラクルに十字架のごとく
男のこめかみ尖る踵を撃ち込んだ
ひくひく男に薔薇 飾る
こぼれ落ちそな目玉の際に
卑しく歪んだ唇の奥に
開き疲れた薔薇活ける
ひっそりと
そびえる魔羅にも薔薇を挿す
最終電車の最終駅
喜々と震える往き際男
もやもや頭で何思う
颯爽とホームに降り立つ君
片足ピンヒールで舞い歌った
薔薇なんて飾る花瓶がなかったの〜