あの、連鎖
真島正人

君が机に腰をかける
音楽室から
ソナタが聴こえてくる
かすかな息遣いが聞こえる
誰のものだろうか?
君のものでも
僕のものでもないような気がする
ソナタは
構成が巧くいっていない
ほとんど崩れている
君は
「構築の失敗」
と舌を出す
僕は
「不定期な低音の連続」
と知ったかぶりをする
君が
スカートの裾を持ち上げるたびに
僕はドキドキして
眠れなかった
やわらかいものが
風の形をして吹いていた
音楽室は
人気のない交差点だ

緻密さが
軍備をまとい
襲撃をすると
冬枯れの井戸が
唐突に水を噴出す
僕はその噴射で目を傷めてしまって
長い局面に入った……

連続体が
かすかに震えてかなえた
古い記録
僕の爪の先まで
神経線でつながっていた
『思考たちの残骸』
石みたいに硬くなって横たわっていた
やわらかいものが形をなくして
僕は涙ぐみ
もう一度深く呼吸をすると
あの、連鎖について話し出しすのだ
大事なことは
包み隠さないほうがいい
ここは
こういう場所なのだと
はっきりと君に
伝えたほうがいい
きっと
きっと

君は膝をいためたらしく
いたわるようにして
かがみこみながら
セーラー服の襟を正した
君はずっと前に旅行したどこか遠い県境のことを話し
僕はその寓話に
ついていけなかったよ


自由詩 あの、連鎖 Copyright 真島正人 2010-01-14 01:28:24
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