引き籠り
合歓木

手拭いでメダカを掬う
たちまち抜け落ちる
水のいのち
幻をおおきく育てていくには
名をとどめ
コトバをかけて
再び流れに放てばいい

明滅する蛍を追って
とうとう露草とともに
黄緑光の幻を囲った
次の日少年は
籠の底のゴミのような
動かず発光もない
二つの昆虫の躯を見た

意識を点し
ヒトがコトバを
発光させるのは
ルチフェリンを燃やす
蛍の求愛と同じことだ

幻は囲い込めない
いのちの仕掛けを
旨く開けなかった少年は
向日葵の劇場に暗く晒され
(ぼくは汚れた卑怯者だ)
あれから少年は寡黙になり
引き籠りの芽を育てた


自由詩 引き籠り Copyright 合歓木 2010-01-12 21:35:35
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