引き籠り
合歓木
手拭いでメダカを掬う
たちまち抜け落ちる
水のいのち
幻をおおきく育てていくには
名をとどめ
コトバをかけて
再び流れに放てばいい
明滅する蛍を追って
とうとう露草とともに
黄緑光の幻を囲った
次の日少年は
籠の底のゴミのような
動かず発光もない
二つの昆虫の躯を見た
意識を点し
ヒトがコトバを
発光させるのは
ルチフェリンを燃やす
蛍の求愛と同じことだ
幻は囲い込めない
いのちの仕掛けを
旨く開けなかった少年は
向日葵の劇場に暗く晒され
(ぼくは汚れた卑怯者だ)
あれから少年は寡黙になり
引き籠りの芽を育てた