ノート(冬と耳)
木立 悟







花と花の間 手と手のまにまに
祝福の無い冠が
どれほど過ぎゆき
過ぎゆこうとするのか


新しい月より
さらに新しい月が
夜を夜より暗くしている
音の手を引き 海辺へゆく


弦と弦の齎すものへ
声と声はついてゆく
「海辺には?海辺には?」
「わたしとわたし(なにもない)」


昼の光の白の舌
張りめぐらされる午後の血脈
空をひろげ
空を運ぶ


冬わたる岩が橋となり
影になり影になり
霧を霧に曲がろうとして
海すくう雨の手へ落ちてゆく


るもの来るもの狂うものらと
空鳴らすものらが同じだと知り
屋根の真下で眠れずに
音の失い光を見つめている


からだへからだへ降りつづく言葉を
からだに消えゆく文字に重ねる
遠くへ遠くへ持ち去られた耳と
会話を忘れて会話しながら


















自由詩 ノート(冬と耳) Copyright 木立 悟 2010-01-10 22:41:43
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