降り来る言葉 XLV
木立 悟








時と硝子
偽りと森
砂のなかの息
くりかえす泡


持ち上がり
青を発し
影に溶け込み
それでもそのままの己れで居る


髪の長い子がふたり
手のひらを合わせ
手のひらを聴いている
目を閉じ 唇を閉じながら


かがやきは濡れ
かがやきはこぼれる
かがやきはしたたり
かがやきは凍る


通じない道に通じる
冬のひと言ひと言を
あらゆる縦に貼ってゆく
あらゆる特権を廃しながら


ひとつよりふたつを選ぶものに
内の響きはのしかかる
熱いものには辛く
包むものからほとばしり


痛みを叫びつぶやき
声で描かれた冬道を
人の名前にかがやかせ
水の行方を水に湛える


おまえを守るために弾いてしまった
おまえをほんとうに見捨てぬ人々
黒白鳥の背に乗り
おまえを見つめつづけている


雨が海を歩きながら
青に青をそそいでいる
昼は見ている
塩は見ている


落ちることのない
空の生きもの
冷たさの指
まわるころも


直さないのか
光らないのか
火照るものに触れるたび
火照りは内に遠去かる


夜の顔料
くちうつし
くちうつし
窓から 土へ落ち


雪は止む
羽は積もる
聖人の肖像
燃える 燃える


小さな寒の渦や渦
雪にまぎれて横にすぎ
冬の暮れの暮れの暮れ
巨きな微笑みを描いてゆく






















自由詩 降り来る言葉 XLV Copyright 木立 悟 2010-01-10 22:38:55
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