さらば
中原 那由多

変わらない景色に馴染めなくて
冬の雨も相変わらず嫌いなままだ
冷たい言葉遊びに対して
拒絶という、純粋すぎる答えを与えてくれた
微かにも願ったことがあったなら

さらば、青い花


屑鉄の山の上から見た月を
未だに忘れることができなくて
人間としての理由が掠れてしまったような声で
愛というものを囁いたなら

さらば、白い服


恋する乙女をうっすらと思い浮かべたら
そのまま宙で破裂した
ネジの外れた時計は今も
振り子を揺らそうと軋んでいる
最期はいつでも優しくありたいのに
涙の在処を見つけることができないのなら

さらば、赤い頬


自然体を装う必要が無くなっても
身体が楽になったりはしないのは
愛というものを繋いでいたこの鎖が
私の骨からできていたから
灰になった手紙の焦げ臭さを
いつか懐かしむ日が来るのなら

さらば、黒い糸




自由詩 さらば Copyright 中原 那由多 2010-01-10 09:14:15
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悠希子