和解
瀬崎 虎彦
映写機がカタカタ鳴っている
僕の撮る写真が君は好きだという
街は白黒というよりも何かひとびとの
息吹をはらんだ色彩に染められている
街灯には設置された年がゴシック体で
刻印されているのだった
この街灯の下を通って家路を急いだ
東から戦闘機がやってくる前もずっと
失われたものをあがなおうとしても
失われたことを消せはしないのだから
正確にはこころで決着をつけるしかない
こころで決着をつけるためには
互いのこころを無防備にさらすほかないが
酢酸のにおいに遮られて茫漠とひとり歩く夜
自由詩
和解
Copyright
瀬崎 虎彦
2010-01-09 22:48:42