インド旅行記18(ダージリン→デリー→成田)
チカモチ

いよいよ帰国の日となりました。朝の6時半に乗り合いジープに乗るつもりだったので、6時に出発することに。

5時50分にフロントに行ってみたのですが誰もいません。前日ホテルマンに6時にチェックアウトさせてほしいとお願いしていたはずなのですが…。5分ほどエクスキューズミーを連呼していたのですが何の手ごたえもなく。どうしたものでしょう。

仕方がないので声のトーンを上げると、ゲスト客が不可解な顔で降りてきました。事情を説明し、ホテルマンがいないので呼んでほしいとお願いしてみたのですが、彼もその術を知らないそうです。申し訳なさそうな顔をして去っていってしまいました。

気がつくと10分が経過しています。どうしよう。このままだと乗り逃がしてしまいそうだ…。
玄関は鍵がかかっているので、ホテルの人がいなければ出ることができません。お金と鍵だけ置いて去る、という最終手段が通用しないのです。

やりきれなさがつのってきました。どうして最後の最後までインド人は私を苦しめるのでしょう。もはややけっぱちになった私は、先ほどよりもさらに強い口調でエクスキューズミー、ホテルマンプリーズ、チェックアウトプリーズを連呼。焦りも便乗して口調はさらに感情的になり、挙句の果てには地団太をダンダンと踏む始末。再度、別のゲスト客が顔を出した時には恥ずかしいくらいにボロボロと涙を流していました。

ただごとではない空気を察知したゲスト客はまず落ち着くように説得し、自分がホテルマンを連れてきてやると言って階段をのぼっていきました。(ベンガル語だったので定かではありませんが、身振りからして多分そういうことだと思います。)

ううう、本当に彼がどうにかしてくれるのでしょうか。行き場のない不安とひっこみのつかなさからなおも泣き続けること数分。気がつけば5人くらいのインド人がこちらの様子を伺っています。
朝っぱらから大騒ぎしてごめんなさい。でもすべてホテルマンが悪いんです。このままだと本当にジープに乗り遅れてしまう。お願いだから早く、早く、早く。

時間は6時15分。ようやく先ほどのゲスト客が、ホテルの奥さんと息子を連れてきてくれました。いかにも寝起きという感じの息子は不機嫌そうに玄関の鍵をあけ、奥さんは無言で請求書を差し出しました。
おつりをもらうつもりでお金を払うと、奥さんは100ルピーを私に返してくれました。どうやらお詫びの気持ちみたいです。これでチェックアウトは大丈夫かと尋ねると、奥さんは「OK、Sorry」と神妙な面持ちで言いました。インド人からSorryという言葉を聞いたのは、後にも先にもこの時だけでした。

最終的には10数人のインド人が事の成り行きを見守っていました。奥さんを呼んできてくれた男性に深くお礼を言うと、心配そうな表情で「気にするな、早く行け!」との身振り。本当にありがとう。

ホテルから乗り場までは5分程度の距離だったので、6時半発の乗り合いジープには無事に漕ぎつけることができました。運転手はやたら慎重なおじさんで、山をくだるのに3時間半くらいかかりました。行きの乗り合いジープは2時間弱で到着したので、あのテンション高かった運転手がいかに凄かったか、この時よく分かりました。

バグドグラ空港からデリーへ、そしてデリーから成田へ。今回はエンジン故障が起こることもなく無事に飛びました。ワイン一本をあけたらぐでんぐでんになりました。


散文(批評随筆小説等) インド旅行記18(ダージリン→デリー→成田) Copyright チカモチ 2010-01-09 12:05:56
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