雨の虜
朧月
雨がガラスに寄り添って
打ち明け話しているような
ひとりの私は指先で
つっとなぞってゆきました
地面をおおう水溜まりが
あまりに暗くみえたので
身をひるがえして逃げました
溺れぬように
逃げました
雨の軌道を妨げず
風も震えているような
ひとりの私の指先に
しんと冷たさ染みました
深く広がる水の層が
幾重にもみえて波のよう
逃げる私のセーターの裾
濡らして
重くしてゆきました
もどっておいでと
呼びました
自由詩
雨の虜
Copyright
朧月
2010-01-07 21:25:42
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