モランヤ
杠いうれ

しりしりと頬に 君からはぐれた氷の埃
ざわめいていたフレーデルが口を噤む
その間を抜け 濃紺の蜜に深く溺れる

針葉樹が冷淡に 自らを槍と仕立てる
芳醇にもたげようとする果実が 授業が始まる時のように居直る

呼吸は聞こえない



君のあとを附けるのはこれがはじめてじゃない

鼻をすする
霜柱がじわり、沈む


生まれつき無かった罪を償わなくてはならないと神様は云う
かなしみをしあわせと思いなおすように仕向けられている
知らない彼らを知っているかのように知らない振りをしなければならない

指がかじかむのは君の所為じゃない
季節は春だし 人々はほんとうは笑うのだから

モラン、

 呼吸は聞こえるかい?――




モラン、夜に
 君を想うと僕は寝付けやしない

軋む錠を緩めて温い風をまとう
例えばあの切られた爪のような月や ただの嘘っぱちなピンホールの星が
君の足跡なんじゃないかと思索しても

モラン、夜に
 こんな夜に 誰にも見付からないでいられるのは
 君と僕ぐらいなんだよ



自由詩 モランヤ Copyright 杠いうれ 2010-01-07 17:21:07
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