しっぽ
伊織

負った傷と都合の悪い過去は
片っ端から切って捨てる
少し 尾骶骨が痛い


道端に捨ててうっかり拾われてしまっては大変なので
その都度回収して箱に収めた


赤いの
どす黒いの
透明なもの
隙間なく並べられた切れ端は
隙あらば元あった位置にくっつこうとする


しっぽを切り落とした後のわたしは大抵いつもぐったりとしていて
ときどきそれらの侵略を許してしまい
血を吐く色の夢を見る



箱は七つほどあるのだが
七つ目もついに満杯になろうとしている
それよりも
こんなもの持ってお嫁にいけない
箱ごと燃やしたところで 灰は消えない
どうしてくれよう
悲嘆にくれているとドアがノックされたのです


慌てて箱を隠し何事もなかったかのように宿題をするわたし

違和に
そのひとは気がついてしまった


彼は言いました
 「新しいしっぽが、ずっときれいだといいね。」
かなわないことを純粋な目で語り きずあとを撫でる
実在する優しさを知り
そして泣きました


自由詩 しっぽ Copyright 伊織 2010-01-06 18:02:02
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