金魚
フユナ



ここは人の家なのだ
息の音がするのは当たり前だ



二階の影は濃い
下にはあたしと
8歳のころ掬った
金魚のなれのはてだけ
(彼はどうしてこう長生きなのか)
(そろそろ死んではくれないだろうか)



息の音がするのだ
どこかから
ここは人の家で
それはあたりまえなのだが



パソコンは
亡くなった祖母の部屋にある
おととしの
祖母の死に顔はミイラにしか見えず
歯は取れ口はくぼみ
初めて見たくちべに姿は
まるでこどもを食ったようだった



食って食らわれる
水草はもう腐り果てて窓は一面にみどり




ここは
あたしと
8歳のころ掬った
金魚のなれのはてだけ
(彼はどうしてこう長生きなのか)
(そろそろ死んではくれないだろうか)



人の家だ
息の音がするのは当たり前なのだが



 息の音を止める
 止めようと思う
 無理だとも思う




金魚だ。




魚の頭をぶすりと落とすことは
祖母から教わった。




南向きの窓は
一面にみどり。



 
 
 
 
 



未詩・独白 金魚 Copyright フユナ 2004-09-23 02:51:38
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