年明けのひと
恋月 ぴの
たばこのヤニで煤けたリビングの壁に一箇所
まるで雪景色を穿ったような真新しい壁紙が気になる
あのひとがわざわざ買ってきては飾っていた
贔屓にしてる野球チームのカレンダー
縦じまのユニフォーム着た選手たちが不細工な笑顔でポーズ取っていた
関西生まれじゃないはずなのに
連敗続くとわたしにまで八つ当たりしてさ
頭にきてカレンダー破り捨ててしまおうと何度思ったことか
会社で貰ってきたカレンダー飾ってみたけど
小振りなサイズに間抜けな白さが未練を誘うようで
このなかにはトレードされてしまった選手も入っているんだよな
あのひとは一枚一枚めくりながらそんなこと呟いてた
通勤路にシャッターを閉ざしたお店の名前は直ぐに忘れ去ってしまうのに
間抜けな白さは愛しあってた頃の記憶をいつまでも押し付けてくる
この際だから壁紙張り替えてしまおうかな
借りてる部屋だし勝手なことできないの判っていても
たばこ臭さと明けたはずの年まで未だに明けぬような気がして
あのひとの嫌いなジャイアンツのカレンダー飾ってみた