ヒトラーの焚き火
吉岡ペペロ
年若い側近たちが
まじめな顔をして公文書を焼いていた
四月の夜だった
焚き火の明かりが
周りの壁に影をめくっていた
憔悴した彼がそこに立っていた
髭のうえの彼の鼻が
四月の夜の香をかいでいた
煤の匂いなかに
人生さいごのリラの香をかいでいた
自由詩
ヒトラーの焚き火
Copyright
吉岡ペペロ
2010-01-04 19:15:32