待ち合わせ感
……とある蛙

小雨の中の交差点
寒さ厳しく 小走りで
自動扉がウィーンと開く
その店に入った時から
異様な空気。

フロアの中央に
背の高いテーブルひとつ
天井にはミラーボール
窓際のカウンターには
数人のおやじが足ぶらぶら

市松模様の背の高いテーブルに
のせられたコーヒーが自分のものであるとは
その店に入るまで気づかなかった。
その店の奥にはやはり背の高いカウンターがあって
店のこまっしゃくれた女の子が一人
仏頂面をしてなにやら計算をしていた。

ほとんどの客はテーブルの高さまで手が届かず
会計をすませて出ていった。
みんな仏頂面だ。
まごまごしていると
店の主人と称する婆が出てきた

婆はでかい。
しかし皺は深く
余りにも迫力があるため、
上半身だけ仰け反ってしまった。
彼女にそのとき逆らえるものは

たとえ冥界の魔王でもあり得ないと思えた。
それが彼と待ち合わせをした喫茶店だ。
スター何とかのチェーンに入っているが、
一つとして同じメニューはない。
頼んでもいない緑色のコーヒー

褐色のクッキーは歯が折れそうに堅い
っというより食べられない。
クッキーという名の凶器
もちろん注文していない。

文句を言おうにも
異様にでかい店の婆
不機嫌面のウエイトレス
どこにも何にも救いはない。
何時まで待てば助かるのか
不明のまま時間だけが過ぎてゆく。
脂汗が額から脇から流れてくる

えーい 面倒だ。
待ち合わせしたことを忘れて出て行ってしまえ

っと金を払って
雨の中に飛び出して行った。

(なんてこったい。土砂降りだ。)
ツいていない。
もちろん 街も人間も犬も猫も
みんな み〜んな ずぶ濡れだ。


自由詩 待ち合わせ感 Copyright ……とある蛙 2010-01-04 15:01:20
notebook Home