初夢
百瀬朝子

死んでしまった
わたしは
ゾンビのぬけがらを探している
腐っても腐っても
失いたくない何かを
無くしたがっている

母の抱いた夢を
娘は黙って飲み込んだ
いいも悪いもわからないとは
反逆の精神さえ知らないこと
いずれ確立した娘は
消化できない想いを
吐き出すこともできなくて
その胃袋を患うだろう

わたしはひとです
あなたもひとです
みんな人です
なぜ、いわなければ
わからないことがあるのでしょう
なぜ、だれかのために
泣くことができるのでしょう

たった一筋でした
痕が消えません

夢を抱きなさい
いまだけはあなたのためだけに
夢を抱きなさい
どこかでだれかの想いと
摩り替わったとしても
喜ぶ人はおんなじです

初夢は覚めました
ヘアゴムは手首にあります

鏡を見る朝
顎の下、短い髭が一本生えました
わたしはそれを器用に抜く
何食わぬ顔ができるように
一本の髭を無かったことにする

矛盾はわたしを肯定する
失くしたくないものは
無くした方が煩わない
それなのに戦う
わたしたちは
守ることが出来ないまま
争っているのは何のため

ゾンビのぬけがらはそぐわない
腐っても腐っても
わたしは人でした



自由詩 初夢 Copyright 百瀬朝子 2010-01-03 20:30:41
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