四人家族のマネキン
吉岡ペペロ



ぼくは高校卒業まで叔父叔母に育てられた
母さんはぼくと妹にいちども会いに来なかった
誕生日にはお金が送られてくると叔母は言っていた

叔母ぼく妹で買い物に出かけると
きまった店でよく服を買ってくれた
その店のショーウインドウには
顔のない四人家族のマネキンがあった
マネキンのこどもの着ている服が魅力的で
妹はそれを欲しがることが多かった

ヒロもこれにする?

叔母がぼくに目配せをする
ぼくが少しでも嫌なそぶりを見せると
妹はくるったように泣いた

叔母がマネキンの母親役の服を買うことはなかった
ぼくは叔母が本当の母さんではないことを
そのたびに思い知るような気がして嫌だった
顔のない四人家族のマネキンに
ぼくと妹がおさまってしまうのが嫌だった

中二のとき万引きで補導されて
叔母が迎えに来てくれたことがある
叔父叔母はそのことを何も怒らなかった
その日の晩ご飯で
ぼくはちゃぶ台を突然ひっくり返した

おまえら、みんな嘘つきや、

叔父叔母にどなりちらし
ぼくは妹をけってしゃがみ込んで泣いた
しゃくりあげて泣いた
次から次へと涙があふれた

おばちゃん、なんでかぜんぶ分かんねん、ヒロがリサとかおばちゃんのこと大切に思てくれてるの、・・・・・・

叔母も泣いた
ぼくも泣いた
妹も泣いた
叔父がはじめてぼくを殴った




photobyライラック


携帯写真+詩 四人家族のマネキン Copyright 吉岡ペペロ 2010-01-03 17:02:01
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