こころの女
吉岡ペペロ
その恋が不倫だとか浮気だとか
ひとに言われてもピンと来なかった
身の上話をして
親にすてられたんだねとか言われても
じぶんにはピンと来なかった
太ったねとか痩せたねとか言われても
違和感だけでピンと来なかった
仕事ができるねとか愛想がいいねとか
そんなことどうでもよかった
意志が強いねとか努力家だねとか言われても
じぶんのことではないような気がして
ひとからどう思われたいとか
そんなことあまり思わずに生きてきた
寝るとき天井を見つめている
雪明かりや
月明かりに
染まってしまったような天井
孤独なのか
孤独ではないのか
孤独なんだろう
それさえひとごとになっている
いま、どこにいるんだ?
女を呼ぶ
こころの女と会話する
そいつがいなかったら
狂っていたかも知れない
たぶん狂っていた
女については
十代のころそのすべてをそいつに教わった
人生について
この世の中のからくりについて
いまもこころの女と会話をしている
こころに住まわせた性と
会話をしている代償だろう
こころが豊饒になればなるほど
現実に違和感をもつ孤独者になっていった
寝るとき天井を見つめている
雪明かりや
月明かりに
染まってしまったような天井
孤独なのか
孤独ではないのか
孤独なんだろう
いま、どこにいるんだ?
女を呼ぶ
こころの女と会話する
こころが豊饒になってゆく
孤独者になってゆく
・・・・