世界朗読旅行・サンパウロ編
馬野ミキ

南米朗読旅行最後の夜
ブラジル西大学での朗読を終えた俺は
地元の学生詩人カルロスに案内されて
サンパウロのとあるセックスバーにいた
暗い店内にユーロビートのような音楽が大音量でかかっていた
ユーロビートは世界共通なのか。

裸の、あるいは裸に近い女たちが
ホールのあちこちに設けられた透明のプラスチックの巨大な筒のなかで
身体をくねらせたり尻を突き出したり
音楽にあわせて踊っていた
ミラーボールがあちこちでぐるぐる回転してて
それらは狂った惑星のようであった
俺は案内されたソファーに素直に座った
そしてそのまま後に倒れた
俺はすでに酔い過ぎていた

カルロスは注文した酒を飲みながら
目の前のその透明なプラスチックの筒のなかで踊る女に
俺の知らない言葉で何か叫んでいた
いいぞー、とか、ヤらせろー、とかそんな感じの野蛮で本質的な言語だろう
まわりから同じような言葉が聞こえたし
女たちはほとんど男を無視するか相手にするかしていた
どっちにせよどの女たちも笑みを浮かべていた
兎に角、色とりどりのレーザー光線が飛び交っていて
あとは狂った惑星が幾つも回っていた

誰も俺を起こしにくる者はいない
つまりショウタイムはずっととおい昔にはじまっていたのだ
ステージでは誰かと誰かが交尾をはじめていた
日本を出てから色々なことがあり
まるで色々なメにあった
それぞれの国の詩人たちはそれぞれの国の内情について情熱的に語った
どこに行っても俺はたいてい歓迎された

俺は寝転びながら交尾をみていた
来世はブラジルに生まれてきてサッカーと交尾をやりまくりたいな思った
色々な国の女を見てきたが
ブラジル人女性の尻はその中でもサイコーの部類に属するだろう
俺はカロルスの尻を見てから
そのまま床で眠った。 




2004年作


自由詩 世界朗読旅行・サンパウロ編 Copyright 馬野ミキ 2010-01-03 05:37:37
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