夢の欠片(かけら)
……とある蛙


一二の時まで、わたしは発光していました。

ちいさなわたしは
空き地のハルジオンの隙間に落ちていた
たくさんの欠片(かけら)を
拾い集めては、
序序にじょじょに発光していきました。

家の隣の空き地には

野球のグラブに木製バット

サッカーボールにスパイクシューズ

試験管にリトマス試験紙

レーサーライセンスにヘルメット

かぶらペンに墨汁、ケント紙

分厚い辞書に文学全集

車掌の帽子に切符鋏

フォークギターにハーモニカ

それらすべての欠片(かけら)たち
コロコロコロコロ ごろごろごろごろ
雑草(くさ)の隙間に落ちていて


それらすべて集めても
一つとして完全な物にならないのですが、
それを拾ったわたしだけは
一つになると信じて浮かれ

完全な物?
それは掴めぬ幽霊で
夢という名の幽霊で
その幽霊が集まって
一二までのわたしは出来ていました。

それから毎日少しずつ
夢の欠片(かけら)が落ちてゆき
そのうち拾ってきたことも忘れ去り、
後から拾ったつまらぬ欠片(かけら)の
日々(ひび)をつないで
今の自分になりました。

ひとりぽっちになったとき
少しは残っている夢の欠片(かけら)を
今でもときどき取り出して
後悔しながら想い出し
ひとりため息を吐いているのです。



自由詩 夢の欠片(かけら) Copyright ……とある蛙 2010-01-02 21:32:36
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