蝶が、銀河を
吉岡ペペロ
昭和五十年代を
少年だったあのころを
ぼくは大人として生きていた
コンクリート塀のよこをジーパンで歩いていた
煙草とやかんの煙のなかではひとを憎んでいた
駄菓子屋で肉まんを食べながら駅を見つめていた
浄水工事の音のすぐそばでは女が殴られていた
ぼくは少年だった
大人たちの哀しみが
こころのなかで合唱していた
生き方へたくその母は
いまもぼくに
子守唄を聴かせてくれている
だれが悪いわけでもない
あらゆる不幸が
ほんとうはそうではないことを
命を投げ出してでも知らせたかった
昭和五十年代を
少年のぼくが歩いている
(壊れたフィルムが朝日を撮っている)
あ、蝶が、銀河をあがってゆく、
ひとつ、河をこえて、
ふたつ、みつ、記憶をこえて、
蝶が、銀河をあがってゆく、、、
(少年だったあのころを生きている)
昭和五十年代を
少年だったあのころを
ぼくは大人として生きていた