新年の扉
服部 剛
日頃の不摂生で
年の瀬に熱を出し
病院で点滴をした三日目
今日、初めて気づいた
点滴を吊るした棒の台車に
歩きやすいよう
掴まる取っ手がついてたことに
昨日、僕は点滴中に
上着と本を持ち切れず
床に落としたお財布を
初老のおじさんが拾ってくれて
若い僕に席を譲ってくれました
ふだん気づかない
様々な小さい優しさを
今年一年
どれほど見逃していただろう
総合病院は今日も
病人であふれ返り
まったく不健康な世であるが
新年という扉の向こうへ
年を越せば
きっと
小さい優しさの数々が
私達を、待っている。