食べられない葉牡丹
小池房枝

葉牡丹
公園の植え込みなんかで
冬は他にないからというような使われ方をしていた葉牡丹
今は冬にも花が多くなったし
葉牡丹そのものも種類が増えたけど
三つ編みのベンジャミンみたいに茎で芸当させられてもいる

とうとう今年は
生きてる植物に吸わせて染める染料まで実用化されたらしく
花屋には生花として青く染められた薔薇が並び
エクステリアコーナーでは
ケージ幾らのパンジーの隣に
ファンシーカラーという口上で
五色の蛍光カラーペンのような葉牡丹が並ぶ

色は数ヶ月ほどで代謝され
ただの真ん中白い葉牡丹に戻るらしいが
どんな庭の
どんなガーデニングに供されるものか
きっとライトアップとかもされちゃうんだろうな

葉牡丹
君は冬の公園でときどきとても美味しそうだった
花よりももっと透明な
光に透き通ってその分の光を宿しているかのような葉牡丹
何がこんなにきれいなんだろうかと
まじまじ見つめてしまうほど時としてかがやかな葉牡丹
けれどもまるで薄味なんだそうだね

まさか食べたんですかと聞き返すと
いや、かじってみただけと涼しくこたえたお嬢さんは
このカラフル葉牡丹にも食指を揺らめかせるのだろうか

今までヒトの食用にはできなかった植物が
アルカロイド
セルロース
とりあえずでも食べられてお腹の足しになるような
いっそそんな薬があったら

それはそれで地球全体が
あっというまに砂漠化してしまうかもしれないけれど
吸わせることでどんな植物も
美味しく食べられるようになるなんて調味料も
開発されればいいのに

芽キャベツのような葉牡丹
食べられない葉牡丹
食べられる葉牡丹


自由詩 食べられない葉牡丹 Copyright 小池房枝 2009-12-29 22:55:06
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