年越しのひと
恋月 ぴの

誰にでも越すに越せない川がある

その川を越えようと試みるもよし
はなから越すことなど考えもせずに使い古しの釣竿一本
かの太公望になった気分で日がな一日

立ち枯れの葦原を渡る北風は冷たくもあり
それ故の優しさをうちに秘めていて

たとえば旧友からの手紙に綴られている
想いを成し遂げたことへの誇り

せっかちな手つきで裏返す焼餅のこおばしさ
心の片隅に多少のやっかみがあるにせよ
ここは素直に礼賛のことばを添え
百八つの鐘では足らぬ我が煩悩を持て余しながらも

穂先より伝わる魚信の手ごたえに
これも人生と一気呵成に消しこむ浮きの向こうへ明日をみる





自由詩 年越しのひと Copyright 恋月 ぴの 2009-12-29 22:31:18
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