川岸の呪座
木立 悟






今までそこにあった熱が
布にうつり
やがて消えるとき


滴の風が片脚を打ち
向こう岸に
点滅する音


かたむき かたむき
火は水に傾き
指は到かず
水は燈る


触れられず
触れられず
ただ風ははじまり


離れる子のうた
別々に追い
何も無い地をすぎ
何も無い地にたどりつく


砂の雪
影の雪
いとおしい いとおしいと
ねむる光の頬をさする


高い水 低い水
飛沫は等しく返る
景のなかにまたたく景


波は剥がれ
風は終わり はじまり
失い名を呼ぶもの
ただそこでのたうつもの


岸辺の人形のうたと姿
水の花に重なり
うたはほつれ
流れに分かれ


声が 指のかたちをして
暗がりを歩む
つまみ なぞり
歩み去る


子のうた 花のうた
人形のなかに流れつき
よどみ ほどける小さな川の
艶やかな影をくちずさむ


















自由詩 川岸の呪座 Copyright 木立 悟 2009-12-29 17:16:18
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