午後の月
月乃助



風花が舞っています
ほんの少し顔をあげて
少女が 見上げる
( 幼さをふりおとした横顔は、りんとして )
おぼろげで 消え入りそうな
白い半月が、南の空たかく
午後のクリスマスの街を 見下ろして、
何かを告げるでもないのに 祈るような
信じることが、できそうな
月がおしえてくれることを
わかった気がしたのです
( それがために涙がおちたりする )
昼間に 輝くこともなく
空にぽつねんとしている それに
心をうばわれたりするのは、
プレゼントを渡せなかった少女の
にぎやかすぎる街に なじめずにいる
悔悟かもしれません
月の切り口から クリスマスのあまく澄んだ
やさしい想いが落ちてきそうで
それを受け取ろうと
差し出したりする手は、それでも
その疵口に小さな指をさしいれ 天空をひどくかきまぜたりする
( そんなことをしても手をよごしはしない )
愚かなことなどでは ないのです
空の半分はもう夜のはじまりに 色をかえ
透明に見えている
月と星の託宣をほじくりだして、ガラスの器にいれ
少女だけのクリスマス・キャロルにして聞いてみたい
( 願いなどではないのです )
新月になってしまえば、消えてしまいそうで
もう知ることもないのですから
クリスマスには半月がのこされる
半分を失ってしまうのは、めぐり合わせ
それがために、今のうちに手にできるものは、
大事にとっておかなければ
なりません





自由詩 午後の月 Copyright 月乃助 2009-12-29 16:23:37
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