パブロ
真島正人
腹いせ紛れに
近所の女に
愛を語った夜
夢の中で
大きな力が
渡ってはならない川を進行した
大群で
歌を歌いながら
さながら王朝末期の
十字軍だった
愛の名のもとに
人が人を
疑わずに殺す
ぼくたちの
霧のような夜は
どこまでも深い
溜息が
雨上がりの空に消えて
たけのこのように
愛が生まれる
記憶は
泥酔している
土の中にあった
栄養分は
何もとどめずに
消化されている
愛の名のもとに
人が人を
疑わずに汚す
ぼくたちの
霧のような夜は
どこまでも深い
愛は
固形であり
また
無形でもあり
法のもとにも
いかなる王の軍にも
また
いかなる
美しい馬にも
支配できないけれども
時として
俺自身忘れちまう
歌おう
歌おうか
忘れたことにまた
嘆き苦しんで
薄汚れた
ゴミダメの愛を
愛の名のもとに
人が人を
疑わずに愛す
ぼくたちの
霧のような夜は
どこまでも深い