緑のみんみん
海里

夏の思い出
台風の帰り道
みんみんを拾いました

踏まれるよりは
木にでも置いてやろうと拾い上げると
意外にもみんみんは力強く暴れて
暴れて飛びついた先が私だったので
服にくっつけたまま連れて帰ってきちゃったのでした

家の図鑑を調べてみると
やっぱりみんみんです
薄めたメープルシロップを
ガーゼに浸してベランダに一緒においてやりましたが
食欲がないのか口吻が動かない

メープルも樹液とはいえ
元気でも飲んだかどうかわかりませんが
みんみんの背中は緑色
中世の騎士の甲冑の胸当てのような
羽化したばかりのアブラゼミの緑色ともちがう
エナメルめいたペイズリー

翌朝にはもう
どこにも見当たりませんでしたが
終わりかけた夏の体で
いったい自分で飛び立てたものか
改めて何かに攫われて喰われでもしてしまったものか

夏の終わりには
みんみんの子供たちはみんなもう
卵から孵って土の中に潜り込んでいるはず

春ではなく
数年後の夏を待って


自由詩 緑のみんみん Copyright 海里 2009-12-27 23:51:06
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