インド旅行記9(バラナシ)
チカモチ

街を歩いていたら日本語が堪能な少年に声をかけられました。うさんくさいなと思いましたが、あまりにも上手なので応じてみることにしました。

どうやら少年、日本語の勉強をしたいがために日本人に話しかけているそうです。普段は医者を目指して勉強しているとか。
僕がバラナシの街を案内してあげます。そのかわり、僕の日本語がおかしかったら修正してください。ギブアンドテイクです。
そう言って少年はニッコリと笑いました。

紳士的なふるまいに胸を打たれ、結局半日は彼と行動することになりました。死を待つ人の家(火葬場で燃やされることを待ちわび、何もせずに死が訪れるのをじっと待っている人たちが住むところ)、地元の人たちが訪れる安い市場、シルク工房など。一通り見た後、少年は占いに行ってみないかと持ちかけてきました。
「すごく当たる占い師がいるんです。サイババの弟子で、日本の俳優の緒方拳さんなんかも見てもらったことがある。彼は『初対面なのにどうしてこんなに自分のことをよく知っているんだ』と驚いていた。もしよかったらどうですか?こんな機会、なかなかないでしょうし」

興味があったので受けてみることにしました。料金は日本円で7000円程度。決して安くはありませんが、好奇心に負けました。

結論から言うと、この占い師の言うことは本当によく当たっていました。書くこと、読むことが好き、一回ふられたことがある、ここ半年で会社から圧力をかけられて自信を奪われた、そのせいで最近集中力が落ちている、など。過去を言い当てることで不信感を取り除き、次には未来を占ってくれました。

言われたこと
・自信を取り戻したら絵を描くことを始めるとよい。
・弁護士、教師などにも向いている。
・金には困らない。
・家を買うチャンスがあるかもしれない。買うとしたら湖や海など、水のあるところがよい。
・29歳まで悶々としているが30歳以降落ち着く。
・結婚は29〜32歳頃。相手は3つ年下の男性。二児の母になる。
・宗教や哲学に興味を持つようになるかもしれない。また、言語を習得しようと勉強するだろう。
・父はこれから先、何度か重い病気になる。今もちょっと体の調子が悪いようだ。しかし80まで生きるので心配しなくていい。ちなみに私は78歳まで生きる。
・酔っ払ってビルから落ちる、あるいは車の事故に巻き込まれる危険がある。

一番驚いたのは最後のやつです。酔っ払ってビルから落ちるなんて、いかにもありそうな話ではありませんか。
当面、高いところではお酒を控えるようにします。

後から聞いた話、父は実際この時風邪をひいて、大熱を出して苦しんでいたようでした。すごいすごい。
どこまで本当なのかはわかりませんが、納得感はおおいにあったので受けてみてよかったです。

宿に戻るとパプーが声をかけてきました。
「さっき、日本人女性の二人組みが到着したんだ。今は寝てるけど、夜にガンジス川下りをしに行くって。今はフェスティバルをやっているからその様子を見られるよ。よかったらラニ(彼はインディアンネームと称して私のことをラニと呼んでいました。王の妃という意味らしい)も一緒に行かない?」
もちろん合意しました。どんな人だろうとドキドキしましたが、いざ会ってみると素朴な感じの人たちだったのでホッとしました。

話を聞くとこの二人組み、どうやら姉妹のようでした。四人兄弟の一番上と一番下。どちらも派遣会社に勤めていたようですが仕事をやめ、三ヶ月ほど前からアジア周遊をしているようです。香港、タイ、ベトナム、カンボジアなど一通りまわり、インドには二週間ほど前に入ったそうです。
あまり込み入った話はしませんでしたが、久しぶりに日本人と普通の会話ができたのが嬉しかったです。

お祭りは思っていたよりも盛大で、人がたくさんいました。ここでもやはり火が灯され、音楽がかかる中でサドゥーたちが祈る様子をボートの上から眺めていました。
夜の空気、ガンジス川、火。
人がいっぱいいたのであんまり感傷的にはなりませんでしたが、これもなかなか悪くない時間でした。

ようやく落ち着いて色々なものを見られるようになってきた気がします。


散文(批評随筆小説等) インド旅行記9(バラナシ) Copyright チカモチ 2009-12-27 10:56:58
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