満員電車と未来
新守山ダダマ
満員電車の中で
ちょっとした隙間を使ってポケットから携帯を取り出し
mixiを見た
密かに尊敬している人が日記を更新していた
その中の一言が 満員電車を変えた
「未来は今作るものだ」
電車が駅に止まるたびに人が増えていき
俺の携帯を持つ手はねじれて、片足も浮いたけど
自分の周りの、この押し合い圧し合いする人たちが
今、こうして未来を作っているんだと思うと
ただストレスが詰まっただけにしか見えなかった絶望的な風景が
何か愛おしいものに見えてきたんだ
みんな、ただ詰め込まれてるんじゃないんだ
なかには、未来はないと思っている人もいるだろう
でも未来がないなんてありえないから
未来は今ここからもう作られているから
俺は尊敬している人から教わったこの考えを
この満員電車じゅうに 世界じゅうにかぶせよう
そして今、俺の身体は耐えがたい態勢を強いられているが
この態勢からでも未来を作っている
未来は、まだ決まっていない
未来は、まだ終わっていない
俺はこのがんじがらめの態勢を踏ん張って、未来につなげていく
つなげていくための、がんじがらめだ
みんな、つなげていくために、この満員電車に乗っている
もうちょっと何とかならねえかと思うけど
俺はこの一緒に詰め込まれた人たちと
押し合い圧し合いしながらもみんなで踏ん張って平和に生きていきたい
ここにはたくさんの希望が詰まっていると思いたい
俺に、このぎゅうぎゅう詰めの中でもポケットから携帯を取り出させてくれた
あのちょっとした隙間だって、大きな希望になれるのだから