みなしごたちの夜
瀬崎 虎彦

僕の
君の中の誰か
誰かについて
誰かしら
思い返している誰

誰かしら
思い返しては
維持することの出来ない
記憶を記録して
記録を
記憶する

冷たい水銀灯の光
冷たい夜に冷たい光を放つ
疎遠な魂たちのように
子供たちはみな
手をつなぐことも忘れて
一心不乱に
回転する
回転する
回転する
回り始め
回り続け
回り終えない

不気味な目の光り
見開かれた目の光り
子供の
回転する子供の
回転する子供たちの
回転する目の
回転する眼球と
回転する眼球たちを
回転しながら観察し
回転するのを反映する
夜の子供たち
夜の子供の眼球
不気味な光りを放ち
見開かれた眼球

目の
目の中に
不愉快で不衛生な郷愁が
対照を通奏低音として
弾けて弾かれている


口の中の赤

子供たちは何も見ない
回転しながら不気味な光りを放つ
眼球より何も情報を得ない
回ることで子宮に帰ることを
夢見ているのだ

ああこの白痴どもを
撃ち殺せ

そういう人も出てくる

ああ木の葉に隠れて
地表に出てくる必要のなかった子供たち
子宮へ帰れ
子宮へ回帰せよ
回転する子宮
捩れた子宮
受精しなかった兄弟姉妹たちの
べったりとはりついた子宮へ
回帰するがいい

不潔な穴倉に頭をつかえ
首に帯を絡ませたまま
死産してくる
子供
子供
子供たち
沢山の死産する
死んで生まれてくる
子供たち
首に帯を絡ませて
赤い口をひらめかせて
笑いながら
生まれ
笑いながら
死産される
子供たち
夥しい数の
死産される
子供たち
回転しながら
この地表に現れる
夥しい数の
死産される
赤い口の
子供たち
目を見開いて
赤い口を見せて
笑いながら
死産される
子供たち

それから目を閉じて
回転することをやめるがいい

一時に足を止めた
不気味な
不細工な
不恰好な子供たちは
耳の手前まで大きく赤い口を広げて
(赤い口の中に腐った眼球が回転している)
まるで口の中にある血の色を見せるために
回転を止めた子供たちは
赤い口を広げ

ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ
ケタケタケタケタケタケタケタケタケ


と大音声で笑い出す

ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ
ケタケタケタケタケタケタケタケタ

と大音声で

笑う笑う笑えよ笑う笑うよ笑え笑え笑え
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ
うふふふふふうふふふふふうふふふふふ


自由詩 みなしごたちの夜 Copyright 瀬崎 虎彦 2009-12-27 02:19:55
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