Dear Girl 茜の空
あぐり
*ちりちりと揺れてる空の片隅へ 帰るきみは恋も知らない*
イヤフォンをして
黒板に鼓膜の言葉を連ねていた
うっすらと覆い被さる、夕焼けは恋人の色だった
頬杖をついてるきみの髪の
その小さなうねりにあどけなさを見つけて
(わたしたちまだこどもだよね。)
真っ白な文字が染まって
ひとつ ひとつの歌がほどけていく
きみがなにか囁いてもいいように
埋めているのは左耳だけだよ
零したきみの真ん中に広がるみずの成分は
多分、明日になったらほんの少し
薄い苦みが増えるんだと思う
(色は青みを失うのだと思う。)
ささやかな影は伸びてくのに
届かないものが近くに散らばっているのはどうして
ひそやかに鐘が鳴るからもう帰ろうか
わたしは今日もきみに恋の話をするんだろう
きみは今日もわたしに曖昧な沈黙をくれるんだ
空に舞っているひかりの欠片が
この教室に降り注ぐよ
わたしたちはまだちいさな少女で
手を繋いで離さないことも許されるって知ってる
少しずつ暗くなっていく空はまだ広くて
ぜんぶを見たことのないわたしたちはまだなんにも産めない
この歌が終わったら帰ろうか
はやくはやくって
あんなにも空が焦げ付いてる