*降りしきるきみの海のまなざしが わたしの中へ流れ込めよと*
右手の小指いっぽんから
左手の人差し指いっぽんへ
さざんかのかきねを散らしていく君の振動が伝わる
ひらひらと落下してはアスファルトを染めて
その赤を映すこともなく空は色彩を圧し殺し鈍く流れる
わたしたちの足跡はひびきに埋もれ
イヤフォンにはサティが満ちているので
この距離を互いに変えることは出来ないのだと悟り
きみのくちびるを湿らせているレモンキャンディの香りだけが
雲間からの光になって
きらきらと
こぼれだしている
(この海に境目なんてないならね、
過ぎてった風を孕んでるわたしたちの子宮も
おんなじみず。)
つまさきが濡れてしまったんだ、
と
きみに小さく囁いてみるのは雨の日の決まり事
じんわりと冷たさが滲んだにびいろの空
くちを開こうと足下を見てみたなら
散らされたさざんかの花びらに触れている雪の
その欠如のない結晶がわたしの靴にも降り積もっていた