パフェ・クリニック
りょう

交通事故で皮膚をなくし
隠れていたヘドロが
全身にあらわれた患者が
急いで運ばれてきた
口の中にも及んでいて
のどまで通った管で
かろうじて息をしていた

時間は一刻も無駄にできず
医師はそのまま手をつっこみ
ヘドロと体をつないでいる
糸をさぐった
感触があればつまみ
指先の温度でゆっくり溶かす
すると少しはがれ
隙間に体が見えた
ヘドロの下に
本当の皮膚があるみたいだ

   苦しいねぇ
   ずっと隠していたんだね
   誰かを守りたかったのかな
   力がないって
   悔しいよね
   いてくれるだけで…
   うん

長時間に渡ったものの
無事にヘドロが除かれた
すると
パフェの形をそのままに
クリームからつまみあげ
グラスなしで置いたように
女が座っていた

まぁ 彼女は退院し
もう出会うことはないかもしれなくて
でも本当は食べちゃいたかったと
ヘドロ臭い
未婚者の医者のため息


自由詩 パフェ・クリニック Copyright りょう 2009-12-26 10:43:58
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