インド旅行記7(アーグラー→バラナシ)
チカモチ

お昼前にバラナシに着きました。ガンジス川沿いに位置するこの都市は、ヒンドゥー教・仏教の聖地として知られるところ。今回、私が最も楽しみにしていた都市のひとつです。
バラナシは最もインドを感じさせる都市と言いますが、本当に宗教色の濃く、泥臭いところでした。街全体が牛の落し物の腐臭に満ちており、ここが一番空気が悪かったように思います。

あらかじめ宿を予約していたので、迎えにきてもらおうと電話をしようとすると、たくさんのインド人が群がってきました。オートリクシャーや宿の客引きです。無視して電話をかけようとしましたが、彼らが差し出すホテルカードの中に、自分がこれから泊まろうとしているホテルの名前が見えました。

カードを持っていたのは元気なおじいさん。聞けば、列車の到着時刻を見計らって迎えに来てくれたそうです。
「迎えにきたはいいけど、列車が遅れてるじゃねぇか。2時間も待っちまった!」
私はすっかり安心して電話をかけるのをやめて、おじいさんに誘導されるがままにオートリクシャーに乗り込みました。

おじいさんは「お前が予約したホテルはいっぱいだから、別のゲストハウスを紹介してやる。料金はそんなに変わらない。日本語を話せるスタッフがいるよ」とやたらテンションの高い口調で言いました。
まぁ観光シーズンだし、そんなものなのかなと疑いもしなかったのですが、後から気づいた話、このおじいさんの話はでたらめで、もともと私が予約していたホテルとは全く無関係の人でした。(この日の夜、予約したホテルから「どうして来なかったんだ!」という苦情のメールがきていました)

そんなこととはつゆ知らず、案内されたのはこれといって特徴のないゲストハウス。
おじいさんは相変わらずテンション高いまま、バラナシを案内してやろうと休む間もなく強引に連れ出しました。
せめてシャワーくらい浴びたかったのですが、おじいさんのテンションにすっかり気圧されて出向くことに。おじいさんはリクシャーの中で情報ノート(過去にガイドサービスを受けた旅行者たちによる評価帳)を見せて、多くの日本人から親しまれていることをアピールしました。ノートには「この人はとても明るくて面倒見のいい人です!」うんぬんの評価が日本語でたくさん綴ってありました。

まず案内されたのはシルクのお店。バラナシはシルクで有名らしく、あちこちでシルクを織っている店を見かけました。帰国後、丁度結婚式の二次会を控えていたし、折角だからスカーフでも買おうと思い3枚購入。全部で6000円くらいでした。

その後、観光名所のひとつになっている大学を見て、ガンジス川くだりのボートに乗りました。一人乗りだったせいかボート料金はやたら高く、その上灯篭流しの花を手渡され、うっかり受け取って流してしまったら高い料金を請求される始末。漕ぎ手の老人と子どもは明らかに力不足で全然進まないし、あぁ今日もすっかり呑まれてしまったなぁとやりきれない気持ちで景色を眺めていました。

川から戻るとおじいさんは本日のガイド料金を請求し、今夜はこれからお祭りを見にいこう、明日はどこそこへ行こうと相変わらずテンション高い口調で提案してきました。
冗談じゃありません。これ以上あなたと一緒にいたら、瞬く間に有り金が底をついてしまう。
さすがに丁重に断り、いそいそと宿に戻りました。

部屋に戻って今持っているお金を確認してみると、予想以上に少ないことが分かりました。たしかにぼったくられたり、お土産買ったりしてるから減りも早いだろうけど、こんなに使っていたとは…。
これから先泊まるホテル代などを考えると、どう考えても足りそうにありません。キャッシュカードは持っているからどこかでおろせば問題ないのですが、今後はちょっと財布の紐を締めることにしようと戒めました。

夕方になり、少し早いけど夕飯を食べに行こうと出かけようとすると、ホテルのスタッフらしき青年に声をかけられました。
片言の日本語を話すインド人で、もしよかったらこれから礼拝(プージャ)を見にいかないかと。行きたいけどお金があんまりない、と答えると、そんな心配はいらない。歩いていける距離なのでお金は取らない、とのこと。もちろん警戒はしましたが、プージャに対する好奇心の方が圧倒的に勝っていたため、お願いすることにしました。

青年の名前はパプー。27歳で、以前大学でヒンドゥー語を学んでいた日本人の女の子と付き合っていたみたいです。ある程度日本語ができるのはそのためだ、と言っていました。
プージャに行くまでの道のりで、街の至るところに祭壇がまつってあるのを見かけました。パプーは歩きながら、ここはシヴァの街であることを説明してくれました。
「シヴァはとても大きな神様で、この街の人のほとんどはシヴァを信仰している。僕はこの街に生まれて本当に幸せだと思う。だって毎日シヴァの恩恵が受けられるんだから」

プージャはガンジス川沿いのガートで行なわれ、サドゥーと呼ばれる礼拝僧が燈台に火を掲げて祈りを捧げていました。周りには太鼓や笛などの民族楽器を奏で、あやしげな歌を歌う者たちが囲い、いかにも儀式という感じでした。
サドゥーはほとんど全裸で、かろうじて前は布で覆っていましたが、お尻も丸出しで前も少し見えていました。日本だったら捕まりそうな格好でしたが、ここではそんな頭のおかしい人が真剣に崇められている。火がきれいだな、と思いました。

眠くなってきたので、頃合を見計らって宿に戻りました。チップを請求することもなく、パプーは「疲れているみたいだからゆっくり休んでね」と言い、スタッフルームへと去っていきました。

宿の屋上にレストランがあったので夕飯はそこで。すすめられたのでキングフィッシャーのビールを飲みました。ライトで飲みやすかったです。


散文(批評随筆小説等) インド旅行記7(アーグラー→バラナシ) Copyright チカモチ 2009-12-25 08:47:04
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